2009年12月1日火曜日

JIA まちづくりセミナー2009 藤村龍至氏講演会

2009年11月26日、TOTOテクニカルセンター大阪にて、JIAまちづくりセミナー2009での藤村龍至氏の講演会が開催された。

私にとっては今回で4回目となる藤村氏の講演会。しかも3ヶ月間で。

今回も何か新しい発見があればと思い参加してきた。


今回は事前に藤村氏から、超線形設計プロセスと批判的工学主義のフルコースのプレゼンを行うと伝えられていたので、これまでのプレゼンとどう違うのかも楽しみにしていた。


批判的工学主義と超線形設計プロセスの内容については、思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)の藤村氏の論文が非常に分かりやすいので、そちらを是非読んで頂きたい。

という事で、ここでは私が再確認した事や新たに発見した事を書き留めておきたい。


まず、藤村氏のバックグラウンドが現在の活動にかなり影響している事。藤村氏は開発初期のニュータウンで育ったそうだ。そこで作られていった郊外独特の空間やコミュニケーションの均質さに違和感を覚えたとのこと。そこから濃密なコミュニケーションへの憧れを抱き、それを建築で実現したいと氏は考えている。

UTSUWA の設計においては、関わっている人とセッションしながらモノを創っていくこと、セッションの中に創造を立ち上げていくことを見いだした。

HOUSE Hでは、クライアントの要望を汲み上げてまず内部のプランが完成し、それから外部の関係性を検討していった。内部の関係性を維持しながら外部を考えるという手法。
このあたりから、外部との関係性、都市との関係性を重視した藤村氏の設計手法がみてとれた。
藤村氏は意図的に外部空間との関わりをプレゼンしている事が分かった。それは、多くの場合外部との関係が問題になるし、内部ばかりを語っていては都市の問題は解決しないとの考えからだそうだ。


次に、超線形設計プロセスのの効果を改めて確認しておくと、
①固有性をより正確に読み取る事が出来る。この場所にしかない形式を抽出する事が出来る。
②複雑性をより確実に構築する事が出来る。1つの形に様々な意味を重ねていける。
③スピードがある。

「その場所のコンテクストをどのようにカタチに入れ込めるか」、「場所性なき場所の固有性をどれだけだせるか」この2点はかなり大きなテーマとなっていると思う。

さらに超線形設計プロセス論の優れているところは、建築設計のみならず、その応用編として教育手法にも用いている事だろう。もしかしたら、これからさらに応用されていき、様々な分野に用いる事も可能かもしれない。


今回は初めて批判的工学主義のプレゼンを聴き、非常に明解な説明が行われた。
まず工学主義の定義として、
①建築の形態はデータベースによって自動的に設計される。
②人々の振る舞いは建築の形態によってコントロールされる。ex.)コンビニの動線など
③データベースと人々の振る舞いの間に建築は位置付けられる。
   ↓
純粋工学主義=匿名的

それに対し、批判的工学主義とは、「工学主義を分析し、戦略的に再構成する」。
①非場所的場所性→郊外に新しい場所性を描く。
②非作家的作家性→固有性と効率性を両立する新しい建築家像へ。
                ↓
            ARCHITECT 2.0


また、会場からの質疑応答を聴いていて私が個人的に驚いたのは、「かたち」というものにこだわっている人が予想以上に多かった事である。
超線形の可能性を認めながらも、「藤村氏はカタチに興味があるのか無いのか」という事を執拗に問う人もいたし、建築や都市計画で最初に「最終形」を考えずに設計していく事が理解出来ないという風な人も見てとれた。
私が想像していた以上に、これまで当たり前とされてきた設計手法から離れられず新しい手法を受け入れられない人は多いのだろう。
これまでの設計手法によって、都市どんな建築が多く作られてきたのか、どんな都市計画が行われてきたのかを、もう一度考えてみる必要があるはずなのに。

最終的に、藤村氏は「設計の醍醐味は、設計前の人間関係の形成にある。コミュニケーションの場をつくる事、社会関係を再構築するための建築をつくることが目的である」と言い切った。
dot architects安川氏のレポート
にもあるように「コミュニケーション人間」である事を宣言したのである。
おそらく「藤村龍至はカタチには興味のない建築家なんだ」という印象を持って会場を後にした聴衆の人もいるだろう。

しかしそうではない。コミュニケーションは、これからかなり重要なテーマとなってくるだろうし、これからの建築に必要とされるものの1つに「自発的なコミュニケーションを生み出す建築」は間違いなくあるだろう。

そのコミュニケーションを藤村氏は重要視し、建築を通して社会に訴えていこうとしているのだと思う。決してカタチに興味がないのではない。藤村氏は「形態を単純化するときに意味を重ねていく」とも言っているのだ。


DESIGNEAST、OCT、AA95展、そして今回と、藤村氏の考え方に高い密度で触れる事が出来た。
私の建築、都市、そして社会に対する視野は間違いなく広がった。いや、広げてもらった。

特に上記批判的工学主義の①で記した、「非場所的場所性→郊外に新しい場所性を描く」というテーマは、まさに私のテーマと重なっているし、これが私が建築の道に進もうとした理由の1つでもある。
そういった事からも、藤村氏の動きににはこれからも注目していきたい。
出来ことなら、AA95展のように何らかの形で関わっていきたい。






















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