2009年11月21日土曜日
book 20
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)、(下)」(村上春樹 著)
村上春樹さんのパラレルに進行していく小説を読むと、
いつも思うことがある。
今、目の前に見えている世界はホンモノなんかじゃなくて、
地面の反対側では、もうひとつの世界が広がっているんじゃないか。
そして、そっちの世界の方が実はホンモノなんじゃないか。
この小説で印象的な文を。
「君は事故を見失ってはいない。ただ記憶が巧妙に隠されているだけだ。だから君は混乱することになるんだ。しかし君は決して間違っちゃいない。たとえ記憶が失われたとしても、心はそのあるがままの方向に進んでいくものなんだ。心というのはそれ自体が行動原理を持っている。それがすなわち自己さ。自分の力を信じるんだ。そうしないと君は外部の力にひっぱられてわけのわからない場所につれていかれることになる。」
もう一文。
「人間ひとりひとりはさおれぞれの原理に基づいて行動しておるです。誰一人として同じ人間はおらん。なんというか、要するにアイデンティティーの問題ですな。アイデンティティーとは何か?一人ひとりの人間の過去の体験の記憶の集積によってもたらされた思考システムの独自性のことです。もっと簡単に心と呼んでもよろしい。人それぞれ同じ心というのはひとつとしてない。しかし人間はその自分の思考システムの殆んどを把握してはおらんです。…」
小説には、作者の様々な想いが詰められていると思います。
その内の、どの部分に読者が共鳴し、汲み取っていくのか。
それは読者それぞれ異なるでしょう。
その汲み取り方の種類が多ければ多いほど、その小説は奥深いように思うのです。
ちなみに、僕はハードボイルド・ワンダーランド側を読んでいる時の方が、ワクワク感があってテンションが上がりました。
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